ハタヨガとアーユルヴェーダ

アーユルヴェーダは、サンスクリット語の生命、生存を表す「アユース」と真理、知識、科学を意味する”ヴェーダ”の複合語で、私達の生命を理解するための科学と言えます。ヨガは「結ぶ」、「結合」するという意味のサンスクリット語を語源とし、心と身体を結びつける、意識と無意識を結びつける、自分と宇宙を結びつける等、様々な解釈が出来ます。ハタヨガの「ハ」は太陽、陽、動的を意味し、「タ」は月、陰、静的等の意味があります。ハタヨガでは太陽の動的エネルギーと月の静的エネルギーを積極的にコントロールし心身の調和を図ることで、真の心のやすらぎを得ることを目的にします。

アーユルヴェーダでは3つのドーシャ(トリドーシャ)のエネルギーが働いて、私達の心と身体つくり、動かしていると考えます。ドーシャにはヴァータ、ピッタ、カファの3種類があります。ヴァータは風と空間の要素を持ち、筋肉を動かす力、消化・吸収された栄養素を体中に運ぶ、代謝された老廃物を取り除くといった、運動のエネルギーです。ピッタは火と水の要素から成り、食べ物を消化・吸収し血や筋肉を作つくったり、見たり聞いたりした情報を自分の知識とする、思考する等、変換させるエネルギーです。カファの要素は土と水で、色々な組織を結合させ身体の構造をつくり、維持する、結合エネルギーです。 私達の心と身体はこれら3つのドーシャの組み合わせ・割合から成り、その割合は人により違います。生まれ持ったドーシャの割合はプラクリティ(体質)と呼ばれ、生涯変りません。健康を維持するためには、生まれ持ったプラクリティに心と身体を出来る限り近づくよう、トリドーシャのバランスを図る必要があります。また病気はドーシャが乱れ、アンバランスな状態が続くことで引き起こされると考えられています。どのドーシャも多すぎず、少なすぎず、バランスが取れた状態でなくてはなりません。

ヴァータは風と空間の要素を持つため、バランスが取れている場合、行動は機敏で活発、新しいことや変化を好み、順応性も高いです。また想像力が豊かで、覚えるのがとても速く、理解力にも長けています。その一方で、落ち着きがなかったり、好奇心が強いために色々なことを試しますが長続きはしません。また覚えるのが速くても、忘れるのも速かったりします。ヴァータがアンバランスな状態になると、強い不安を抱えたり、心配性になったり、気分が変動しやすくなり、不眠症になったりします。また便秘や冷え性、身体の乾燥、頭痛や腰痛など体の痛みが出てきます。

ピッタが優勢な人は、火の持つ知的要素から好奇心旺盛で、集中力もあり、情熱を持って物事に取り組みます。また表現力に優れ、リーダーシップを取ることが得意です。消化力も強く、食欲旺盛、快食快便です。その反面、自分の考えを相手に押し付けたり、プライドが高く、頑固で完璧主義的な面もあります。 ピッタがアンバランスな状態になると、下痢をしたり、肝臓や胆嚢、胃腸のトラブルが出てきます。皮膚が弱いため、にきびや発疹、蕁麻疹が出やすくなります。また、目が充血しやすいのもピッタの特徴です。心理面では、短気で怒りっぽくなったり、批判的になったり、完璧主義が行き過ぎて敵を作りやすくなったりします。

カファタイプの人は、カファが持つ土と水の要素から、落ち着いていて、滅多に興奮したり怒ったりしません。動作はゆっくりしていますが、体力と持久力はあります。物腰が柔らかく、他人に対しても寛大です。憶えること自体には時間が掛かりますが、一度憶えると忘れません。体質的に太りやすいタイプなので、肥満には注意する必要があります。カファがアンバランスになると物事にこだわり、執念深くなったりします。また、動く意欲がなくなり、鬱っぽくなったりします。身体面では、アレルギー性の鼻炎、鼻水や鼻づまり、気管支系の疾患に掛かりやすい傾向があります。

ハタヨガのアーサナ(ポーズ)は全てのドーシャに影響を与えますが、ポーズによる各ドーシャへの働きは違ってきます。例えば、前屈の(フォワードベンド)ポーズはヴァータとピッタを抑えますが、カファを増加させます。後屈の(バックベンド)ポーズはヴァータとピッタを増加させますが、カファを抑えます。過剰なヴァータが原因の症状や病気には、ヴァータを抑える効果があるポーズ、例えば前屈のポーズ、が効果的です。過剰なカファを原因とする症状や病気には合は、カファを抑える効果のあるポーズ、例えば後屈のポーズ、を取ると過剰なカファを取り除くことが出来ます。

特に自覚症状もなく健康体であっても、各プラクリティ(体質)に合わせたヨガプラクティスは心と身体のバランスを保つ上でとても重要です。ヴァータが優勢なタイプは日頃から、心身を落ち着かせ、体を温める効果のあるポーズを取ると良いでしょう。ピッタが優勢なタイプは、心身を落ち着かせる一方で、体を冷やす効果のあるポーズを取ると良いでしょう。カファが優勢なタイプは、刺激を与え、体を温める効果があるポーズを心掛けると良いでしょう。

年齢や季節にもよって優勢なドーシャも変ります。幼少期はカファ、青年期から老年期まではピッタ、老年期以降はヴァータが優勢になります。季節もドーシャに影響します。寒くて湿度が高い時期はカファが増加するので、刺激を与え、体を温めるポーズがドーシャバランスを取るのに役立ちます。暑い季節はピッタが増加するので、体を冷やす効果があるポーズを練習すると良いでしょう。そして寒く乾いた季節にはヴァータが増加するので、心身を落ちつかせ、また体を温めるポーズが合っています。

そして1日の中でも支配するドーシャは変ります。午前2時から午前6時まではヴァータ、午前6時から午前10時まではカファ、午前10時から午後2時まではピッタ、午後2時から午後6時まではまたヴァータが支配し、午後6時から午後10時まではカファ、そして午後10時から午前2時まではまたピッタが支配します。朝の早い時間にヨガプラクティスをする方が多いと思いますが、午前6時までの間はヴァータが優勢になるため、心身を落ち着かせるポーズを練習すると良いでしょう。午前6時から午前10時はカファが優勢になるため、刺激を与えるポーズを練習すると良いでしょう。

このように、各プラクリティ、年齢、季節や時間帯に合わせたポーズを毎日のプラクティスに取り入れることで、乱れ安いドーシャのバランスを取ることが出来ます。積極的にドーシャのバランスを取ることで心と身体の調和を促し、ヨガプラクティス効果を向上させましょう。

中川 陽子

Svadhyaya - Studying of the Self to Bring Balance
"What is Yoga"

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